匣庭遊び

オリジナル中心創作ブログ。

適当に暗くない話を書いてみよう的な

試作。
拙い文章及び流血もろもろご注意。
突然だけれど、私は死にかけている。

私の身体は今や両手の平を何本もの釘で打ち付けられて壁に貼り付けにされている。
それだけでは心許なかったのか胸や腹には刺身包丁やら千枚刺しやら果てはドライバーまで
日常見かける刃物系をとりあえず刺しときました、みたいなラインナップでもう針山なのか人体なのかよくわからない状態で無理やり壁に縫い付けられている。
なんていうか、もはや刃物部分通り越して持ち手まで深く食い込んでいるものまである。貫通してすっぽ抜けちゃうんじゃないだろうか。
無事なのなんて精々顔ぐらいだろう。何故そこだけ無事なのかも謎だけれど。
とにもかくにも、見るに耐えない姿である。こんな姿の人間が拝めるのは多分ホラー映画の中か遊園地のお化け屋敷ぐらいじゃないだろうか。


死にかけているのに何故こんなに余裕があるのか?
そもそもどういう状況なのか。
順を追って話そう。

そもそもとして私はどこにでもいる普通の高校生だ。
ちなみに友達は少し少ない。
普通に学校に行って、普通に授業を受けて、たまに居眠りをして、ノートの隅に落書きをして。
学校が終われば幽霊部員をしている部活には行かずバイトに行って帰る。
宿題はたまにやり忘れる。そんな普通の高校生。
そんな筈だったのだけれど。

事の発端はなんというか、バイト帰りに襲われたわけでもなく、家にやってきたのだ。
普通に玄関のチャイムを押し、その襲撃犯はやってきた。
両親も姉もチャイム音には気づかず誰も玄関には行こうとしない。
そのうち途切れなく音がするようになって痺れを切らして私が行ったのだ。
そして、ドアを開けようとノブに触れた瞬間に強いショックと共に意識を失った。

その後、気が付けばこの状態だった。
目の前には私を襲撃したと思われる骸骨のマスクをした人物がいて悠々と椅子に腰掛けていた。
その脇にはこれみよがしに置いてある大きな工具箱。
入りきらずにはみ出たチェーンソーなども見える。
恥ずかしい話だがそれを見て失禁もしてしまったし泣き叫び命乞いもした。
だがこの襲撃犯はそんな私の様子に困ったように頭をかきこう言ったのだ。

「とりあえずそれ系の事は依頼主が来てからお願いできますかね?俺に言われてもしょうがないんで」

骸骨マスクが言うには私を殺したい依頼主がいて、その人物は私に直接手を下したい、でも楽したいからトドメを刺す程度だけ残して。
とそういう依頼を受けたらしかった。
ちなみにその時点で約束の時間から3時間は経過していたらしい。

「困るんすよね。死なない状態で維持するのも楽じゃないんで。依頼主がきたらすぐに痛みがピークになるようにとか色んな時間も止めてあるのに来ないし」

そこまで言われて私は初めて痛みがないのに気がついたのだ。
どうりで元気に泣き叫んで喋れたわけだ、と。
この骸骨マスクは何やら不思議な力でもお持ちらしい。もしくは例のごとく人間ではないあれとか。
最初こそ命乞い以外にも色仕掛けやら実はドッキリの可能性やら模索してみたものの全て失敗に終わった。
唯一骸骨マスクが揺らいだのはお金ぐらいだろうか、私の貯金額を聞いてがっくり肩を落とし首を横に振られたが。
そして現在は、その3時間よりもずっと後、途中「あ、日付変わった」と骸骨マスクが呟いていたので確実に日はまたいだものと思われる。

「ねぇ骸骨さん、もう諦めません?多分依頼、忘れられてるんですよ・・・・ごまだんご」
「いやいや・・ここまでやらせといて流石にそれはないっすよー・・・五寸釘」
「そもそも依頼者誰なんですかー・・・自宅に電話かけるとか確認したらどうですか?・・・ぎ・・ぎ・・・ぎねす」
「あ、それさっき言ってたんで奈々さんの負けっす。いやー・・さすがに自宅に電話かけちゃうのはなー・・・聞いてないし気が引けるというか・・・」

とうに襲撃犯と標的の関係に飽き飽きしていた私たちはこうして暇つぶしに勤しんでいた。
ちなみにしりとりは負け続きだ。
骸骨マスクは途中からスマホまで弄りだした。ずるい。

「そういえば知ってます?奈々さんのバイト先のお店で火災が起きたって。」
「え、知らないよ・・・って知れるわけないでしょ。この状態じゃ携帯だって見れないんだから」
「まぁなんつーか、俺も今知りましたし。結構酷いことになってたみたいっす。逃げ遅れた人が何人か居るとか・・・あ」
「何?」

おそらく口のあたりを抑えた後で骸骨マスクはたっぷりと悩んだ後、重苦しい雰囲気で口を開いた。

「・・・・死にました。」
「何が?未来予知?」

「いえ、依頼人」

つぶやいて慌てた様子でスマホを操る。
色んなニュースに目を通したのだろう、頷き間違いない、と力なく呟いた。

「・・・・・今月の家賃」

呆然と呟いたことばはそれだった。
私は家賃の為に殺されるところだったのか。

「・・・骸骨さん、落ち込んでるとこ悪いんだけどもう私に用がないならここから開放してくれないかな。無事に元の状態に戻した上で。」

とりあえず状況が変わったところで説得を試みる。
けれど説得に対する力ない答えはおおよそ絶望的なものだった。

「・・奈々さん。奈々さんは食べ終わったお菓子を開ける前の状態まで戻せますか?勿論食べた中身込みで。」
「できないに決まってるでしょ」
「俺も同じっす。そこまで酷い状態の奈々さんをそこから元になんて戻せません」
「したのアンタだろ」
「破壊はできても世の中復元は難しいでしょう、それと同じっす・・・つまりえーと・・・」

言いにくそうにしているけど、次にくる言葉は大体わかった。

「奈々さんは何もしなくてもこのまま死にます。多分出血死かショック死で」

てへ、と可愛く語尾でもつきそうに首を横に傾げてこの骸骨マスクは再度の死亡宣告をした。
私の運命はやはり変わらないのだろうか?天井を仰ぎ、まだ痛みのこない今のうちにもう少し抵抗を試みる。

「・・・絶対?」
「多分」

多分って何だ多分って。

「あー・・・なんつーか、方法がないわけでもないっす。でもそれなりにリスクがあるかも、しれない?
つーか・・・最悪奈々さんの想定するような死は避けれるかもな・・みたいな」

曖昧な言い方が引っかかるがここで磔のまま痛みによるショック死か出血多量による死亡よりはマシならばいいのではないだろうか。

「だったら早くしてよ」
「・・・受諾とみなしておっけーって事っすね?」
「そうだよ」

私の言葉に骸骨マスクは嬉しそうに手を合わす。

「じゃ、料金はひとまず奈々さんの手持ちの貯金って事で」
「おい、ふざけるな。誰の仕業だ」
「じゃ、やっぱり無しにします?」

卑怯だ。この骸骨マスクは人情というものがないのだろうか?
・・・あったら私はこうなってないな。
ため息を盛大に吐き、私は渋々了承した。
夜道に気をつけろよお前。

「ではでは、サクっとなっと」


軽快な掛け声と共に私の視界は宙を舞った。
あ、れ・・・?
ぐるんと回転して下に首の無い私の体と骸骨マスクが見える。
ちょっと、約束が、ちがう・・・。
そのまま私の意識はブラックアウトして・・・




今、目を覚ました。
空には薄ぼんやりとした月が瞬いている。

「・・・・夢?!」
「残念ながら現実っすよ奈々さん」

起き上がった場所は公園のベンチだった。
傍らには見知らぬ男がいた。誰だ、こいつ。
訝しげな様子の私を見て男はひょいっと何かを被る。
それはあの骸骨マスクだった。

「・・・あんた意外性もなく平凡な顔ね」
「それ奈々さんに言われたくないっすよ」

確かに。
ではなくて。現実って言ったかこの骸骨。

「・・・あ、あんたよくも騙したわね!ひとの首をいきなり・・!」

言いかけて気が付く。ついている。首、私の体にちゃんと。
包帯が巻かれているけれど確実に、くっついている。
見れば包帯は体のあちこちにも巻かれていた。
首の包帯をペタペタと触って確認する。ついている、けど・・なんか微妙な違和感が

「あぁ、奈々さんダメっす。まだ縫い付けたばっかなんで。馴染むのにもうちょい掛かります」

あぁ、なんだ縫い目か。

「・・・ちょっと待てこの平凡骸骨、縫い目ってどういう事だ」

元骸骨マスクの男の髪を掴み思い切り睨みつける。
ひっと男は情けない悲鳴をあげた。

「暴力はよくないっす奈々さん!だ、だから最初に言ったでしょ!破壊はできても復元は難しいって!」
「あぁ、聞いた聞いた。で、その後で方法はないわけでもないって聞いた」

それは私が無事に、開放されるという意味では無かったのだろうか?
その為に貯金全額も了承したのに。

「奈々さん、いた・・痛いっす!離して・・は・・離せ!」

誰が聞くか。
そう思ったけれど私の手はあっさりとその指を開いてこの男を自由にした。

「・・・今、何したの?」
「いや、だからこれがリスクがあるかもしれない方法・・ってゆーか
・・・まぁつまり、奈々さんは肉体的に死んで俺の傀儡としてゾンビ化したけど精神の死は免れたわけっす」
「話が違う!こんなことになるなんて聞いてない!」
「聞かれなかったんで」

でも想定する死からは免れたっしょ?と元骸骨マスクは悪びれもなく微笑んだ。

「ちなみに傀儡って言葉からわかる通り今後奈々さんと奈々さんの持つもの全ては俺のものなんで頑張って俺を養っ・・・俺の仕事を手伝ってください」

よろしく、と言いかけた元骸骨マスクの顔を私は思い切りグーで殴りつけた。
これからどうなるのか、なんて事を考える前に今はこいつをとりあえず殴れるだけ殴っておきたい。

薄い月明かりの下で、悲鳴が響き渡る。
私はこうして、ゾンビになった。
その先どうなるかはまだわからない。

nana.jpg
スポンサーサイト
  1. 2014/10/23(木) 10:37:38|
  2. 創作―文章
  3. | コメント:0
<<ハロウィンハロウィン | ホーム | かぼちゃ>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

匣嶋 茜

Author:匣嶋 茜
趣味で絵を描いたりお話を作ったりします。
無断転載等の行為は禁止致します。

何かございましたら
http://form1.fc2.com/form/?id=943534
までご連絡ください。
著しく常識を欠くようなもの以外であれば追って返信致します。

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (38)
日記 (26)
創作―異界童話モール・モール (8)
創作―文章 (2)
二次創作 (0)
分類不能―童話モチーフなど (0)
お仕事 (1)
ファンアート (1)

アルバム

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR